MoMAの永久展示所蔵品になったゲームパッドのようなキーボード
「tagtype」は日本語入力のためのデバイスです。日本語は50の音節文字から構成され、それらは子音10文字×母音5文字のマトリクスでまとめることができます。tagtypeの入力方式は、5個ずつ2列に配置された10個のボタンを用いて五十音の行と段を交互に入力していくものです。これにより、既存のQWERTY 配列のキーボードに比べ、より簡易で直観的な操作が可能になります。tagtypeの入力方式はソニー株式会社および株式会社ベネッセコーポレーションによって製品に採用されました。
背景 – 従来のキーボードの限界
キーボードは欧米のオフィス環境に合わせ、プロのタイピストのためにデザインされたのがはじまりです。机に向かい両手10本の指を自在に動かすことで操作できるよう設計されています。しかし、インターネットやPCの到来により、ユーザの使い方や体験は多様化しました。これまで普遍的なインターフェースとして通用していたキーボードは、技術の進化、またそれに伴う多様なニーズに対し、対応しきれなくなったのが現状です。 tagtypeは、そのような課題に対して発案されました。
アプローチ – ハードウェア、ソフトウェア、デザインの統合
tagtypeは、短期間での商品化を目標に、ソフトウェアとハードウェアの両知見から開発されたワーキングプロトタイプです。さらに、デバイスの市場性を高めるため、障害者の方々を含め誰もが簡単に組み立て、カスタマイズできるデバイスとして設計されました。
ハードウェアとソフトウェアの親和性、デザインとエンジニアリングの親和性は入力デバイスのユーザビリティにおいて多大な影響を与えます。本プロジェクトでは、山中俊治氏(Leading Edge Design)と田川欣哉(Takram design engineering)、本間淳(FLX Style)の3名よって、高い機能性を有する美しいデバイスとして具現化されました。
結果 – 機能性に優れた直観的操作
従来のキーボードを車のマニュアル操作に喩えると、 tagtypeはオートマチック操作に近い使用感です。キーボードは入力の仕方を学習するために、ある程度の練習期間が必要ですが、tagtypeの場合、練習に多くの時間を費やすことなく使用することが可能です。完成度の高い製品を作るため、外部のハードウェアから内部の回路まで、プロトタイプを開発しました。ハードウェア、ソフトウェアがインテグレーションされたtagtypeは、机に向き合うことなく、どのような姿勢でも操作できるようクオリティ高くデザインされています。その完成度と先進性が評価され、tagtypeはニューヨーク近代美術館の永久収蔵品に選定されています。
Project Information
- Expertise: Hardware
- Year: 2004
Project Team
- Project Direction: Kinya Tagawa
- Product Design: Shunji Yamanaka (Leading Edge Design)
- Software Design: Jun Homma (FLX Style)
- Photograph: Yukio Shimizu
Kinya Tagawa
Design Engineer, Project Director