エネルギー予報をポエムで伝える実験的なデジタルツール
イギリスにおけるエネルギー危機を受け、Takramのロンドンチームは実験的なエネルギー予報ツールを開発しました。
イギリスで開催されるCOP26を目前に控えた2021年、私たちはエネルギーをより深く理解することを目的としたプロジェクトを始めました。
Energy Proverb Netは、私たちがエネルギーシステムとより親密な関わりを持っている、そんな架空の世界への入り口です。現実に利用可能な技術を使って、エネルギーとの新しい関係を想像するためのツールとして制作しました。何十年も前から海の天気を表すのに使われてきた船舶予報のように、エネルギーの地域ごとの予報を体験することができます。
Photons fall, panels aglow, to the town, energy will flow.
この実験的ツールは、エネルギーのゆらぎをことわざの形で表現し、天気の変化が利用可能な自然エネルギーの量に与える影響を、リズミカルで覚えやすくしてくれます。これらのことわざは、人工知能を使って生成されています。
天気と地域の自然エネルギーとの関係を理解することで、エネルギーのサステナブル使用を促せるのではないかというのが仮説です。
エネルギーの地域性を知る
私たちはまず、イギリスとアイルランドにあるすべての発電所をマッピングし、どれだけの電源がイギリスのグリッドに供給されているかを確認しました。このためのデータは、Elexon と World Resources Instituteなどから容易に入手できます。
次に、このデータをクラスタリング・アルゴリズムにかけることで、イギリスの「エネルギー地域」を作成しました。これらの地域は、総容量や発電ソースの違いによって互いに重なり合うように作成され、エネルギーの多重的な地域性を示しています。
人工知能がデータと詩をつなぐ
エネルギーに関する言葉は、専門用語や堅い表現に溢れ、理解しにくいものです。それを天気予報のように地域ごとに覚えやすい言葉に変換するために、エネルギー予報にはことわざが添えられています。現状のEnergy Proverb Netでは、それぞれのことわざは人工知能ツール「GPT-J」を使って作成されていますが、より激しく変化していく気候の下、地域の住民たちが新しいことわざを考え、投稿するような未来の世界も想像できます。人工知能は人間の創造性に取って代わるものではなく、理解を助けるためのツールとして使われているのです。