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May 7, 2024/Interview

カルチャーを越境するクリエイティブ ── ALAUDARK Branding Filmのクリエイティブ・プロセス

2023Takram上海スタジオにある依頼が舞い込む若くグローバルなユーザーにブランドを訴求する方法を一緒に考えてほしい依頼の主はエクストリームスポーツDirt JumpのグローバルブランドALAUDARKTakramはクロスボーダーなチーム体制とビジュアル非言語からコンセプトをつくる手法でこのプロジェクトに臨みましたビジュアルデザイナーが戦略過程から入ることで実現したユニークなプロセスについてCEOのデイヴィッドさんとTakram上海の趙子駿に話を訊きました
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Text:
  • Asuka Kawanabe
4min read

近年エクストリームスポーツのなかでも人気が高まっているDirt JumpDirtでつくったセクションをジャンプスタントに特化したMTBMountain BikeBMXBicycle Motocrossで走る競技であるDirt Jump北米やヨーロッパを中心にワールドワイドに人気を博しています

ALAUDARKはそんなDirt Jumpのパーツの製造を手がけるグローバルブランドですTakramはそのブランディングフィルムの制作を担当しています

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ALAUDARKオンラインストアより
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ALAUDARKがサポートするDirt Jumpのライダーたちは世界に広がっている

多くのユーザーリサーチをするなかで自分たちの主要な顧客が10代後半から20代の若者であることがわかりましたそうした若年層にブランドを訴求する方法を探していたんですALAUDARKの創業者でCEOのデイヴィッドさんは語ります

加えて世界中にプロダクトを販売しているALAUDARKのユーザーはバックグラウンドも多様です若くグローバルなオーディエンスがいることを踏まえテキストよりも理解しやすくかついろいろなことを表現しやすい動画という形式による情報発信が適していると考えましたデイヴィッドさんはTakramに動画制作を依頼した背景を説明します

プロジェクトをリードしたTakram上海スタジオの趙 子駿チョウ シシュン動画を通じてALAUDARKというブランドがもつチャレンジ精神を表現しようと考えました

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LARKBEAKTALONなどのALAUDARKの商品ライン

単純な部品を安価に大量生産することが多いDirt Jumpメーカーのなかでは珍しくALAUDARKは自転車の構造の研究やカスタマイズにも力を入れ唯一無二のブランドをつくりあげてきましたその挑戦する心をブランディングでも大切にしたいと思ったんです

デイヴィッドさんと趙が描くグローバルなコミュニケーションを実現するためにTakram東京スタジオのメンバーで3DCGを専門領域とするビジュアルデザイナーの小林諒と小松怜奈をプロジェクトメンバーに加え国境を越えたチームづくりをめざしました

ビジュアルでコンセプトをプロトタイピング

ひと口に動画といってもその表現方法はさまざま製品の製造過程を紹介する場合もあればメッセージを何かしらの物語にのせて伝えるケースもあります今回ALAUDARKTakramはあえてストーリーラインをもたせず動きだけで興味を惹きつける方法をとりました

実はストーリーラインのあるものとないもの2パターンを制作しましたその結果観る人の文化圏や国ごとのトレンドに左右されづらい後者を採用することになりましたと趙は話します

SNSでの発信を想定し動画は約40秒という短さ車輪ひとつ取っても何か楽しいブランドだなと感じてもらえるようなモーションをALAUDARKが手がけるパーツごとに考えたと趙は説明しますそうしたモーションを何パターンも制作したあとでTakramチームはそれを統合するコンセプトを加えました

パーツを人間に見立て動きでその生命力を表現しようと考えたんですコンセプトはPlayful Parts趙たちはそれをさらに細分化し3つの軸をつくりました

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ALAUDARKBrand Value

ひとつめのPLAY the Life仲間と競い助け合いながらDirt Jumpという競技を心から楽しむ姿をを表現したモーション

ふたつめのSYNC Heartsアスリートの心の繋がりや感情の高ぶりを表現するインタラクションや連動性のあるモーションです

3つめのFLY HighではDirt Jumpのエキサイティングな側面をメタルや石土のマテリアルダイナミックなフレーミングそしてテンポのいい編集カット割りや音楽で表現しました

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PLAY the Life:普段の練習から一緒に競い合いながら
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SYNC Hearts:困難な時は助け合いながら
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FLY High:達成しそうな時は一緒に大胆に

先にビジュアルをプロトタイプしてからコンセプトに落としこむという今回の方法は従来のクリエイティブのプロセスを逆行するものですブランディングにおいてはまず言葉でコンセプトを固めそこからビジュアルをつくるという方法が一般的

しかしさまざまな文化圏のオーディエンスに向けた今回のプロジェクトではあえてビジュアルを先行させることで直感的で言葉にとらわれない表現を目指しましたまた非言語的なコミュニケーションを駆動させるうえで重要となる音楽でも英国を拠点とするサウンドデザイナーをチームに招き小林や小松と同様に国境を越えたチームとして制作していきました

プロセスを通じてのインナーブランディング

実はイノベーションファームと一緒に何かをつくるのは初めての経験でしたデイヴィッドさんはTakramとのプロジェクトを振り返って語ります

Takramのチームはどうすれば国際的なオーディエンスに届く発信ができるのか広い視野を与えてくれましたチームと話せば話すほどこの動画を通じて何を訴求したいのかが明確になっていきましたしそうした会話がブランドの強みを再認識することにもつながりました

趙にとっても従来のクリエイティブとは異なるプロセスでつくる今回のプロジェクトは冒険だったといいます動画の公開後にすぐコメントがついたのを見て嬉しくなりました

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ブランディングフィルム公開後のユーザーのSNSでのリアクション
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世界各地のファンからのダイレクトメッセージ

デイヴィッドさんは動画へのリアクションだけでなくその制作プロセス自体にも意味があったと振り返ります

一緒に動画を制作した6カ月間でALAUDARKというブランドを通じて築き上げたい価値は何かを考え抜きました動画は一度公開してしまえば終わりですがその思考プロセスこそが本当の意味で会社の財産になっています

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Zijun Zhao
Designer, Project Director
機械工学デザイン学経営学のバックグランドをもつデザイナー大手メーカーITベンチャーに就職した後同僚4人と起業しtoB的新規製品・サービス創出を主な業務とする2017年から国家プロジェクト関西文化学術研究都市に参加し1年間の講師兼メンターを担当18年にTakramに参加し21年にTakram上海スタジオを立ち上げ22年に中国CCTVInnovation Road番組に出演し当局に中国消費経済人物と表彰された在日期間中ブランディングUI / UXプロダクトデザインなどのプロジェクトに携わり最近では米中マーケットをターゲットとしたブランディングや製品開発を主な業務とする
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Ryo Kobayashi
Visual Designer, Motion Designer
ビジネスとクリエイティブの境界を溶かすビジュアルデザイナー / モーションデザイナー2020年〜22Onesal Studioでナウエル・サルセド氏に師事CGIを駆使したビジュアルデザインとモーションデザインの領域で活躍する映像領域全般及びリアルタイムグラフィクスなどの領域でビジュアルデザイン等を手がけるほかプロダクトビジネスデザインのリテラシーを高めさまざまなアワードを通して活動領域を広めつつある22年よりTakramに参画KOKUYO DESIGN AWARD 2021 TOKYO BUSINESS DESIGN AWARD 2021ともに準グランプリADFEST2021Film Craft: Silver / DigitalCraft: BronzeCANNES LIONS 2017Bronze等を受賞
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Rena Komatsu
CG Designer, Visual Designer
3DCGを軸にした実体感の強いビジュアルでコンセプトメイクのリードや未来をプロトタイピングするデザイナー抽象度が高く複雑な対象を適切にデザインするために3DCGならではの質感やマテリアル動きを活かしたビジュアルエンジニアリングを模索する東北大学経済学部在学中のスペイン留学で自由で大らかな空気に触れクリエイティブへの興味を抱くフリーランスCGデザイナー・映像制作会社を経て2023Takramに参加映像表現によるビジュアライゼーションからプロダクトのフィジカルなプロトタイピングへと領域を拡張することを目指す米どころ東北の出身とあって大のお米好き好きな品種はゆめぴりかだて正夢